Slapstick New Year's day1



To美誉ちゃん&晃くん

芽衣です。

ちょっとご無沙汰してます!

クリスマスはどうでしたか?

どうせふたりのことだから、ラブラブ熱々〜の一夜を過ごしたんでしょうね。

あーうらやましー。


いつになく(そーでもないか?)ぐれているのは他でもありません。

イヴのディナー、小此木くんに仕事で当日ドタキャンされました!

あの自己顕示欲の権化のような知事が、イヴ当夜、松本で余計なパフォーマンスをしくさって、

その取材に急遽彼が駆り出されてしまったのでした。

クリスマス・イヴなんだから、選挙向けパフォーマンスなんかしてないで、東京あたりで

オネーチャンたちといちゃいちゃしてろよ、オッサン!と雪空に向かって叫びましたよ。くっ。


小此木くんがジャーナリスト志望だということは、予備校の頃から知ってました。

だから、地元の新聞社に記者として入社できたことは本当に良かったと思ってますし、

応援もしたいと思ってます。

彼に臨時とはいえ知事の取材が任されたってのは、上司の期待の表れでもあるのでしょうから、

喜ばしいことであることも分かってます。


でもねっ、イヴは、松本で一番高いホテルのレストランのディナーを予約してたんだよぉぉぉっ!

これが怒らずにいられようか。


あ、ちなみに部屋は予約してませんでした。

このへんがあたしのヘタレなところなんだよなあ……ってのは今はおいといて。


ムカツイたので、職場の寂しげな男性でも誘って、予約通りにディナーに行っちゃおうかなとも

思ったりしたんだけど、ホテルに電話してみたら、喜んでキャンセル受け付けてくれるとのことなので

(きっと飛び込みの客がいっぱい待っていたのだろう)その日は大人しくケーキ買って帰宅しました。


はあ。


全くもう、あたしって小此木くんの何?って、こういうことがあると、また考えちゃうよ。


ごめんね、年末の忙しい時にこんなメール。

でもね、こういうこと愚痴れるのって、美誉ちゃんと晃くんしかいないんだよー。

励ましのお便り、お待ちしております……





芽衣ちゃん 晃さん


芽衣ちゃん!メールありがとう!!美誉子ですっ。


>イヴのディナー、小此木くんに仕事で当日ドタキャンされました!

うわああ、それは悲しいー。

次の知事選では、あのオッサンには投票しないでやればいいよ!


きっと小此木さんも悲しかったと思うよ。

そんでもって、知事から話を聞きながら(よく歩いてる政治家を取り巻いて、記者の人が取材してる

でしょ、ああいう光景を想像してます)さりげなく足くらい踏んでやったに違いない!


ムカツクのもすごく解ります。

でも、職場の男の人で間に合わせたりせず、まっすぐ帰る芽衣ちゃんて、やっぱ純で可愛いよう。

私なら行ってたかもです(え)


>どうせふたりのことだから、ラブラブ熱々〜の一夜を過ごしたんでしょうね。

イヴは、地元の友達とホーム・パーティーでにぎやかに過ごしました。手作り持ち寄りで、

要するに忘年会ですよ。


ところで、芽衣ちゃん、ということはクリスマス・プレゼントも小此木さんに渡せなかったってこと?

だったら、それをネタに、年内に会おうよーとかって、誘えるんじゃない?

きっと小此木さんもプレゼント用意してるだろうし(してなかったら、私が怒りに行っちゃう!)

でも、芽衣ちゃんから誘うのはやっぱ、癪だよねえ。

小此木さんも、ここはやっぱし即座に埋め合わせデートのお誘いを入れるとかして欲しいところ

ですが、どう考えてるのかなあ。

どうなんだろう。芽衣ちゃんが怒ってるだろうと思って、怖くて誘いにくいのかなあ。

そのヘン、男心を解説してください>晃さん





to:芽衣さん 美誉さん

from:晃


>そのヘン、男心を解説してください>晃さん

ズバリ予測します。

きっと小此木さんはプレゼント用意していると思います。

そして芽衣さんからの連絡を待っていると思います。

俺だったら、仕事終わったら夜中でも謝りに行っちゃうところだけど、小此木さんの性格からして、

悶々と悩んでいる可能性大。

ここはひとつ、芽衣さんが女の度量を見せて、電話のひとつでもかけてあげたらどうでしょうか。

その際、

「イヴの埋め合わせしてよね〜ぷりぷり」

などと、ちょっと拗ねて甘えてみたりするのは、大いに有りだと思います。


頑張って下さい。健闘を祈ります。

そして、ぜひ結果をお知らせ下さい>芽衣さん


ところで、

>私なら行ってたかもです(え)

って、俺がデートすっぽかしたら、他の男と行っちゃうってこと?>美誉さん


それからイヴは、パーティだけじゃなかったじゃない。

その後もあったでしょ?



#1月1日 AM6:30 晃


 元旦の早朝まだ薄暗い時間、雪がやんでいたので、ジョギングがてら遠回りして、曽根家に向かった。

今朝の積雪は5pほど。吐いた息が凍りそうなくらい白く、頬がぴりぴりと引きつるくらい冷たくて、

ニット帽を耳までぎゅっと引き下げた。でも、冷たく澄んだ空気の中、田圃の間の農道を、除雪して

いない路肩の新雪をスノトレできゅっきゅっと踏みながら走るのは気分がいい。昨夜は家族で紅白観戦を

しながら年越しそばを食べ、ちびちびと自蔵の酒を飲んでいるうちに、気分良く眠くなってしまったため、

紅白どちらが勝ったのか見届けずに寝てしまったので、体調も上々。

 大学も2年生までは、体育の講義と週3回の水泳部の練習があったため、運動不足とは全く縁が

なかったが、3年に上がって農学部校舎に入り浸るようになってから、特に院に上がってからは、

自ら課した「週に最低2時間は泳ぐ」というノルマさえ達成できないことが多くなっている。それでも

季節の良い時期は、研究の合間に演習林を走ったりもできるが、冬はそれもままならない。まあ、

家でも大学でも雪かきをしてるから、全然運動不足ってわけじゃないとは思うけど。

 しかし、やはり走るのは気持ちがいい。体内の淀んだ二酸化炭素が、きりっと冷えた酸素に

入れ替わっていく清涼感は冬ならでは。

 走りつつ、携帯で時刻を見ながら、元旦とはいえ……元旦だからこそ、曽根家もすでにみんな

起きてるだろうと予想する。ウチも出かけてくるときにはすでに、台所から盛んに湯気が上がっていた。

 お互いお客で忙しくなることは目に見えてるし、3日からは大学に行かなきゃいけないので、

今のうちに彼女に会っておきたい。

 去年の正月までは、何となく元旦から曽根家へ年始にいくことが憚られていたのだが、今年からは

一番のりで(家族以外にということだが)彼女に「あけましておめでとう、今年もよろしく」と言いに行く

権利はあるのではないかと思う。

 ウチと彼女の家は同業者で近所だしもちろんつきあいは古いのだけれど、元旦から行き来をする

ような風習は無い。それはウチと曽根酒造の間だけではなく、市内の同業他社にも言えることであって、

各蔵は、商売的にも忙しい時期だし、三が日は取引先や自分のところの職人さんたちをもてなすのに

精一杯で、同業者まで手が回らないというのが実態。どうせ松が取れたらすぐに組合の新年会が

あるわけだし。

 だから俺も去年までは、ほとぼりが冷める3日くらいに、彼女を初詣などに誘うついでに年始の挨拶を

してきたのだけれど。

 今年は、年明け一番の彼女の笑顔と会える。

 わくわくする。

 曽根酒造の前に来ると、彼女のお父さんがスキーウェア姿で、玄関先の雪かきをしていたので、

帽子を脱ぎ声をかけると、驚いて顔を上げた。

「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」

「お、晃くん、おめでとう、どうしたこんな早くに」

「忙しくなる前に、ご挨拶をと思いまして、ジョギングの途中に寄らせてもらいました……手伝います」

「そうかい?済まないねえ」

 3台の車の雪を下ろしつつ、6台分のスペースのある駐車場を綺麗にするのは、2人がかりでも

なかなか大変な作業だ。これならば四駆でなくてもハマることはないだろうという程度まで雪を

除け終えた時には、良い具合に汗をかいていた。

「助かったよ。正月から働かせちゃって悪かったね。さ、上がりなさい。美誉!美誉!晃くんだよ」

 お父さんは赤ら顔に滲む汗をジャケットの袖で拭いつつ、玄関から大声で彼女を呼んだ。

「あ、いえ、ご挨拶だけと思って寄っただけですから……玄関先で結構ですので」

「そう言わず、温まって行きなさい。そうだ、お年玉あげなきゃ」

「め、めっそうもない」

 いくらまだ学生だって言っても、このトシでお年玉もらってられるかい。

 ううむ、春の出来事以来、待遇が良くなったのは本当に喜ばしいことではあるが、ここまで下にも

おかないおもてなしだと、まだ尻の穴がむずがゆい。

「えー?晃さん、どうしたの、こんな朝早く?」

 彼女が驚いた顔で、奥から小走りに出てきた。レトロな菱形模様の赤い着物に、襷をかけている。

髪型はゆるいお下げに編まれ、大正モダンな雰囲気……か、可愛い。

 一瞬でれっとなりかけるが、慌てて顔を作って頭を下げた。

「あけましておめでとう」

「あ、はい、おめでとうございます……って、朝から一体どうしたの?まあ、いいわ、とにかく上がって」

「いや、ジョギングがてら挨拶に寄っただけだから」

「そう言わないで。雪かき手伝わせちまったし」

「やだー、お父さんてば、新年早々雪かきさせたの?ごめんねぇ。それなら尚更上がってよ」

 強引に引っ張り上げられると、台所に通された。

「お母さん、お義姉さん、晃さんがお年始に寄ってくれたんですって」

 台所には湯気がもうもうと充満していた。3つのレンジにはそれぞれ大鍋が乗り、おまけに床の上では

餅つき器まで動いている。

「あら、朝早くから」

「あ、あけましておめでとうございます」

 台所の入り口で間抜けに頭を下げる。

「おめでとう」

「おめでとう、今年も美誉ちゃんをよろしくね」

「今お雑煮出来るところだから、食べてって」

 お母さんは臙脂の縦縞の粋な着物だ。

「あ、いえ、ジョギングがてらご挨拶に寄っただけですから」

「そう言わないで、うちのお雑煮美味しいのよぉ。お餅もつきたてだし」

 お義姉さんは薄いグリーンの可愛らしい花柄の着物。

「そうよ、晃さんてば、雪かき手伝わされちゃったんだもん、温まって帰った方がいいよ。」

「あら、そうなの、そりゃごめんねぇ。美誉、座敷にストーブつけてあげなさい」

「それから美誉ちゃん、悪いけど、双子が大人しく寝てるかどうかちょっと見てくれない?一応香誉に

見てるようには言ってあるんだけど」

 曽根家では、9月にお兄さん夫婦に双子の男の子が生まれている。

「はあい、じゃ、晃さんこっちで待ってて」

 また彼女にどんどん手を引かれて、座敷に通された。襖をぶちぬいて2間続けているので、

まるで武道場のように広い。

「寒くてゴメンね。すぐ暖まるから、ストーブのそばにいて」

 彼女は大きなFF式石油ストーブのスイッチに点火した。

「いや、走ってきたし、雪かきもしたし、全然寒くなんか……」

 ごにょごにょ言ってはみたが、彼女がストーブの前に置いた、いつもとは違うふかふかの房付きの

座布団に落ち着かない気分で座った。

「ちょっと往誉(ゆきよ)と柾誉(まさよ)見てくるね」

「うん……」

 彼女が部屋の隅にあった掃除機を持って……どうやら掃除中だったらしい……部屋を出ていくと、

突然座敷はしん、とした。ストーブのゴォッという音がやけに耳につく。

「お、晃くん」

 座敷の襖が開いて、誉さんが一斗樽を転がして現れた。すでに着物姿で、いつになく若旦那っぽい。

「あ、あけましておめでとうございます。手伝います」

「おめでとう、悪いね、んじゃ、そこの床の間に……」

 一斗樽を二人で床の間に据える。

「鏡割りするんですか?」

 床の間の前にふたりで座り込んで位置を確認しつつ、

「そこまではしないけどね、お宅もそうだろうけど、うちにくるお客さんは、酒が楽しみで来る

わけだから、演出だよね。ところで、こんな朝早くからどうしたの?」

「あ、あの……ジョギングがてらご挨拶に寄っただけだったんですが」何回同じこと言ってるだろう。

「なぜかこういうことに……すみません、お忙しいところ上がりこんじゃって」

 誉さんは笑って、

「ウチは全然構わないけどさ、どうせ今日は朝から晩までお客さんだらけだし、でも、おせちと餅と

酒しかないよ」

「晃くん、ビールどうだい?走ってきたんなら、きっと美味しいよ」

 そこへ羽織袴に着替えたお父さんが瓶ビールとグラスを持って入ってきた。

「え、もう始めるのか?」

 誉さんがさすがにそう言って、お父さんを見上げた。

「雪かきして喉が乾いた」

 お父さんはすまして言い、結局そのまま3人でビールを飲んでしまった。まだ朝の7時過ぎ

なんですけど。

「やだ、もう飲んでるし」

 そこへ、香誉ちゃんを連れて美誉さんが戻ってきた。香誉ちゃんも晴れ着を着ている。美誉さんが

着つけてきたらしい。

 山吹色の着物を着た香誉ちゃんは、まるで市松人形のような愛らしさ。

「おお、香誉、可愛いな、くるっと回って帯も見せてみろ」

 お父さんが目を細めてそう言うと、香誉ちゃんは恥ずかしそうに笑ったが、長い袖をぱたぱたさせ

ながら、見せびらかすようにその場でくるくると回った。

 美誉さんは、俺の隣にきっちり20pほどの間を空けて座って。

「ほら、香誉、晃さんにあけましておめでとうは?」

 香誉ちゃんは美誉さんに言われ、ポンと畳に勢いよく座ると、お行儀良く手をついて。

「あけましておめでとうございます」

 と頭を下げた。

 俺も慌ててあぐらをかいていた脚を正座にして、頭を下げた。

「おめでとうございます……あ。お年玉、用意してこなかった……」

 しまったぁ……

「いいのよう、香誉、祖父ちゃんにも、ひい祖父ちゃんにも、ついでに美誉ちゃんにも、いっぱい

もらったもんね?」

 と美誉さんが言うと、香誉ちゃんはこくん、と頷いて、

「いっぱい……」

 嬉しそうに小さな両掌で口元を隠した……か、可愛い。

「あ、そういえば、双子は誰が見てるんだ?」

 鼻の下を伸ばして香誉ちゃんに見とれていた誉さんが、我に返ったように美誉さんに訊いた。

「祖父ちゃんが、一緒に寝ててくれるって。お客さん来始めたら起こしてくれって」

「え。お祖父さん具合悪いんですか?」

 彼女のお祖父さんはうちの祖父より更にちょっと高齢で、もう80半ばになろうとしている。

「ううん、そうじゃなくてね、夜中から明け方まで神社の方に詰めてたからなのよ。うち、

氏子総代なのね、今年」

「ああ、そういうのもあるんだあ……」

 と言うことは、いつかうちにも回ってくるということなのだろうか。

「私もちょっと飲んじゃおうかな」

 彼女もお盆に伏せられたグラスに手を伸ばした。

「美誉は後にしろ、晃くん送っていかなきゃだろ」

 誉さんが、ハエでも払うように彼女の手を払った。

「あ、いいですよ、また走って帰ります」

「飲んで走るのは、幾ら若くてもやめた方がいいよ」

「そうね、晃さんを無事に送り届けてからにしよう」

「……すみません……」

 全く何しに来たんだか。忙しいところ邪魔しに来たようなもんじゃないか。ジャージのまま、盛装

している曽根家の人々に囲まれてると、余計に場違いに感じる。とっととお暇しなければ……

 しかし結局お雑煮をご馳走になり、お土産にお年玉代わりの一升瓶を持たされ、彼女の車に乗り込んだ

ときには曽根家に上がり込んでから1時間は経っていた。

「ゴメンね、ほんと、行かなきゃ良かったなあ」

 着物で器用に運転する彼女の横顔を見ながら言う。

「え?来てくれて嬉しいよ。真っ先に私のところにお年始に来てくれたんでしょ」

「まあそうだけど……ところで、今更だけど着物、可愛いね。髪型も」

「本当はね、髪は大人っぽくアップにする予定だったのよ」

 彼女が苦笑混じりで言う。

「でもね、ほら、これが消えなかったの」

 信号待ちで、左のお下げを上げてみせる。左耳の下に、薄赤い痣。

「誰がつけたんでしょうね?」

「ああ、ゴメン。そこまで考えなかった」

 クリスマス・イヴに俺が付けたキスマーク。

 ウチまではどんなにゆっくり走っても、車では10分足らず。もっとふたりきりで居たいけど、

今日ばかりは仕方ない。

 裏門の道は雪が深そうだったので、店先の駐車場に車を停めてもらった。

「じゃあ、皆さんにくれぐれもお詫びしておいて」

「大丈夫だって。一日中あのテンションのままだから」

 美誉さんは笑うが、いやはや……

 と、雪かきスコップを持った人影が、ずい、車を覗き込んだ。

「あ」

 慌てて車を降りる。

「こら、晃、朝飯も食べないでどこに逃げ出してたんだ?お前が行方不明だから、OEDより重いものを

持ったことのない、か弱い俺が雪かきなんかするハメになったんだぞ。ところで、こちらの美しい

お嬢さんはもしかして」

 あっちゃー……ヤバイ人に見つかっちゃったよ。

「あー、曽根酒造の美誉子さんです。美誉さん、聖兄です」

 美誉さんも慌てて車を降りる。

「はじめまして、曽根美誉子です」

 お辞儀をした拍子に、2本のお下げが跳ねた。

「ああ、やっと会えましたね!晃の姫君については、お噂だけはたんと聞いておりましたよ」

 兄貴はちゃっかり彼女の手を握る。

 だいたい聖兄がイギリスから帰国したのも3年ぶりなのだが、前回帰ってきた時はウチには2泊しか

せず、大学に用があるとかで、すぐに京都に行ってしまったので、彼女に紹介する暇がなかった。

「い、いえ、こちらこそ」

 美誉さんはさりげなく手を引きながら、頭を下げた。

「さ、ここは寒いですから、中へ中へ。ずずーっと」

「いえいえ、お年始にいらした晃さんを送ってきただけですから、ここで……」

「そう言わないで。おーい、曽根酒造さんのお嬢さんがいらしたぞー」

 聖兄は大声で奥に叫ぶ。

 彼女は頭を抱えた……結局、俺と同じ羽目になりそうな予感。

「まあまあ、美誉子さん、いらっしゃい、あけましておめでとうございます」

 義母がすたすたと出てきてしまった。

「おっ、おめでとうございます、すみません、朝から……」

 彼女は恐縮してぺこぺこと頭を下げる。

 正に、先刻の曽根酒造での俺の姿だ。

「何を言ってるの水くさい、さあさあ上がって頂戴。晃ってば、こんな朝はやくから曽根酒造さんに

行ってたの?失礼じゃないの。あ、それから、そろそろ着替えておいてね」

「はいはい」

 彼女は義母にどしどし奥へと連れ去られてしまった。

 兄貴がその後ろ姿を見送りつつ、加えて俺に雪かきスコップを押しつけつつ、

「うーん、噂には聞いてたが、可愛いなあー。この野郎、兄を差し置いて生意気な」

 雪かきは逃れられそうもないので、せめて言い返した。

「これだけは年功序列ってわけにはいきませんからね」

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