染まり初め2

「やめて……だめ、怖いよぉ……」

「怖くない。俺に任せろって言っただろ?」

 唇を離している間も、指でゆるゆると愛撫を続ける。

「だって……感じすぎて……どっか飛んでっちゃいそう……」

 いきそうなのか。

「大丈夫だ。俺が捕まえててやるから」

 片手を伸ばすと、桜の手がそれに絡みついてきた。細い指が、痛いほど俺の腕にくいこむ。

「桜は、俺に任せて、感じてればいい」

「せんせぇ……あ……」

 脚の間から体をどかし、桜の隣に横たわる姿勢になる。脚を緩く閉じさせて、割れ目を軽く指で押し開け、

舌をそこに戻すと、びくびくっと太股が痙攣した。

「やだ……あ……んあ……ああ……」

 腕に食い込んでいた指に、更に力がこめられる。

 細い悲鳴が漏れ、がくん、という感じできゃしゃな背中が反った。

 その震える背中を、力いっぱい抱き留める。

―――このまま、全身を駆けめぐる欲望に任せ、震える躰を組み敷いて、泣き叫んでもおかまいなしに、

一気に奥まで突っ込んでしまいたいと―――俺の獣の部分は、やってしまえと囁く。

 けれど、俺を信じ切って、必死にすがりつく桜に、そんなことが出来るわけはない。

 苦しげに閉じられた目尻に溜まった涙を、舌ですくい取る。

「……先生……」

 うっすらと目を開けた桜の息は、まだ荒い。

「あたし……どうなっちゃったの?」

「いったんだろ?」

「あ……そっか、そうなんだ……」

 シンプルな答えを聞いて、桜は気が抜けたように、俺の肩にしがみついていた腕の力を抜き、呟いた。

「イクってこういうことなんだ」

 知らなかったのか。

「桜、お前、自慰ってしたことないの?」

「えっ」

 桜は俺の腕の中で首をすくめた。

「そ、そんなこと、訊かないで下さいよっ」

 うるんだ目が、怒ったように睨みつける。

「興味本位で訊いてるんじゃないって。お前自身が、お前の躰のこと、どれだけ解ってるのか知って

おきたいから」

 正直に言えば、かなり興味本位とか、言わせてみたい、ってのもあるけど。

「そ…そうですか……」

 桜は恥ずかしそうに目を逸らして、

「……弄ったことくらいはありますけど……こんなになるなんて、知りませんでした」

 そう言って、がばっと俺の胸に顔を埋め、

「もぉ……超恥ずかしい……」

「そうかそうか」

 さらりとした髪を撫でつつ、こっそりと喜びを噛みしめる。そうすると、やはり、この瑞々しい躰を

目覚めさせるのは―――俺の役目、もしくは特権ということに。

「じゃ、色々やってみなきゃな」

「色々って……きゃ」

 左腕を上げさせて、脇の下から二の腕の柔らかいところに唇をつけてみる。

「せんせ……そんなとこ、くすぐったい……」

「くすぐったいだけか?」

「え……」

 桜は真剣な顔をして黙り込んだ。その部分に神経を集中させているようだった。

 と、俺の唇が触れている部分の筋肉が、突然小さく震えた。

「あ……」

 上ずった声が漏れる。

「感じるだろ?」

「なんで、そこ、すごいくすぐったいところなのに?」

「くすぐったい場所は、感じる場所である場合が多い」

「へえ……」

  ひたすら丁寧に、桜の全身に触れた。

 一度達した躰は、初夏の草原の花々が風にそよぐように、俺の指先や唇にたやすくなびく。白い肌は、

官能の高まりとともに、みるみる染まっていく。

 桜色に。

 俺が、染めているのだ―――という実感は、俺のワガママ極まりない男の部分をいたく満足させた。

だって、男なら誰でも見る夢じゃないか?他の男が触れたことのない瑞々しい躰を、自分の愛撫で染め上げて

いくってのは。

 しかし、その染まっていく様を堪能しているだけで、かなり充足感はあるのだが、それだけで済むか

っていうと、そうもいかないのが男の悲しいところでもあって。

 さて。

 布団にぐったりと横たわる桜を眺めて考える。

 そろそろ、大丈夫だろうか……

 もう逆らうことはない脚を大きく開き、滴るほど濡れたそこに唇をつけ、そっと舌先を狭い穴の

入り口に這わせる。

 とろとろと溶けるように濡れているのに、そこは頑なに狭い。

「……あぁ」

 桜の喉から、甘いため息が漏れる。

「せんせ……」

 揉みほぐすように入り口付近を舐め回すと、細い指が俺の髪に絡みつく。

頑なだったそこから、少しだけ力が抜けた。

「痛かったら言えよ」

 右手の中指を少しずつ入れていく。

 爪はきっちり切りそろえてきた。

 指1本でもかなりの抵抗感。ゆっくり押し込みながら、壁を押し広げるように探っていく。

「うぁ……」

「痛いか?」

「大丈夫……ですけど、なんか……躰の中、触られてるって感じ……」

 痛くないと言いながら、桜の目には涙が溜まっている。

 狭いけれど、その中も潤いは充分だった。熱く湿ったそこは、俺の指をうねうねと締めつけた。

ざらりとした壁に指の腹が触れた時には、まるでペニスがそこに当たったかのように、背中をぞくりと

その感触が這い上った。

 目眩がするほど、入れたかった。ペニスの張りは、さっきからもう痛いほどだ。何もしていないのに

こんなに堅くなったのは、ホント、何年ぶりかってくらいに。

 無防備に俺の前にさらけ出されている、潤いに満ちた躰……今すぐ入れたいと言っても、

桜は嫌がらないだろう。

 けれど、そうしないのは。

―――とても、大切だから。

「先生……」

 喘ぎながら、桜が俺を呼んだ。

「痛いか?」

「入れて、いいですよ」

うわ。そんなに顔に出てたか……?

「……もうちょっとな。指、2本にしてみるからな」

 見透かされた照れ隠しにキスをすると、喘ぎ混じりに、それでも熱い舌は、もだえるように絡みついてくる。

 指2本でゆっくりと中をかき混ぜると、湿った音が暗い部屋に響いた。

「痛くないか?」

「大丈夫です……」

 そう答えながらも、眉間に皺が寄りまくり。

 中を丹念に探り、一番奥より少し手前、腹側の壁に勃起したかのようにふっくらと盛り上がる部分を

見つけ出す。そこを少しだけ強く、指の腹でこすり上げてみる。

「あ……」

 びくんと、桜の腰が跳ねた。

「ここ、どうだ?」

「どうだ……って……」

「痛いだけか?」

「え……と……」

 桜は答えに悩んでいたようだが、そこをこすり上げるたびに全身が震える。

 おそらくここが。

痛いことは痛いのだろうけれど。

「痛い……んですけどね、でも……うぁ……なんか……」

 少し強めに刺激してやると、ひときわ大きく桜の上半身が跳ねた。

「今日すぐってわけにはいかないだろうけど、慣れてきたら、多分ここが感じる」

「そ……なんですか」

 涙目が俺を見つめる。

 多分、感じてはいるんだろうけれど……全く痛くなく、ってのは無理だよな。

「……そろそろ、いいか?」

 桜は頷いて、微笑んだ。

 汗に濡れた額にキスをして、床の間の行灯を点け、ボストンバッグのポケットに入れておいた……暗い

ところでごそごそしなくて済むように、風呂の支度をするときに、こっそり移しておいたのだ……避妊具を

出す。桜に背中を向けてすばやく装着……と。

「へえ……」

 布団にいるはずの桜が、俺の肩越しに、興味津々といった表情で覗き込んでいた。

「うわっ、なんだよ。見るなよ」

「え、みせてくださいよ。保健体育で習ったっきりなんですもん」

「……やりにくいんだよ」

 焦ると手元が……

「……よし、オッケ」

 なんとかみっともなくない程度に手早く装着して、行灯を消し、桜を追い立てるように布団に戻る。

 キスをしながらもう一度、布団に押し倒す。割れ目に指を這わすと、指にはしっかりとぬめりが

まとわりついた。それでも念のため、もう一度そこに、唾液をまぶすように、丹念に舌を這わせて。

 そっとそこにペニスの先端を宛う。

「ゆっくり入れるからな」

「はい……」

 ぐっと押し当てると、めり、と音がしそうな感触で、頭がそこにめり込んだ。

「んっ……」

 押さえたうめき声。

 手で半ば隠された顔は、やはり、苦しそう……

「痛い……な?」

「大丈夫……です」

 そう言う声が、すでに苦しそうなんだが。

 それにしても、狭い……

「難しいかもしれないけど、出来るだけ、力抜いて、な」

「はい……」

 桜は目を閉じて、深呼吸をした。

 しかし、じりじりと押し込んでいくと、跳ね返されるような圧力が次第に高まっていくようで。

 処女って、こんなに大変なんだっけか?

 処女を抱いた経験と言うと……高校の時の彼女は、そうだった。但し、俺も初めてだった。初めて同士

だったから、わけもわからず、とりあえず入れちゃったって感じで……今思い返せば、さぞかし

痛かっただろうなと思う。

悪いことしたなあ……

「センセ……」

 桜に呼ばれ、俺は慌ててほろ苦い思い出を断ち切る。

「痛いか?やめるか?」

「ううん」くす、と泣き笑いのような笑みを漏らして「思ってたほどは痛くないですって、言おうとしたの」

「そりゃ良かったけど、まだ半分しか入ってないぜ」

「そうなんだ……それなら、ねえ、先生、もっと甘い言葉を、下さい」

 そう言って、桜は上半身を半ば起こしていた俺の首に手を回して、抱き寄せた。

 この期に及んで、更に気の利いた甘い言葉……と焦って考えてみるけれど。

「ネタ切れなんだけど」

 俺のような朴念仁が、そうそう甘い言葉のストックなど持ってるはずもない。

「じゃ、好きだって、言って下さい……いっぱい」

「……わかった」

 桜の望むことを何でもしてやりたいと思っている自分がいる。今なら、この状態から引き返せと

言われても、やれる。

 だから……言える。ガラにもない言葉も。引き返すよりは、よっぽどマシだし。

「好きだ」

 吐息と一緒に耳に吹き込む。

「うれし……先生、なかなか言ってくれないから」

 ぎゅうっと俺に絡んでいる腕に力が入る。

「大好きだ……桜」

「うふふ、もっと言って」

「……愛してる」

「え……」

 桜が驚きの声を漏らしたその時、桜の緊張が緩んだのか、それとも俺が押し込んでしまったのかは

判らないが、ずるり、という感じで、ペニスは桜の中にすっぽりと吸い込まれた。

「あ……うわぁ……ああっ」

「う……悪ぃ……少し引くから」

 すっかり奥まで入ってしまった。桜の一番奥に、自分の先端が強く押しつけられているのが判る。

こんなに一気に入ってしまっては、さぞかし……

「だめっ」

 引こうとすると、桜の脚が腰にぎゅっと巻き付いてきた。

「せっかく入ったんだから……」

「大丈夫かよ?」

「痛いけど……先生があたしの中にいるって感じがすごくするから、引かないでくださいっ」

 動くとよけい痛いだろうし、とにかくじっと動かずにいた。

 痛いほど熱く締め付けてくるのに、それでもそこはとても優しくて、俺は目を閉じ、その優しさを

全身で味わう。

 と、桜の頬に押しつけていた自分の頬に、熱いしずくが流れてきた。

 やっぱり無理かと思って顔を上げると、案の定、桜は声も上げず、ぽろぽろと涙を流していた。

「相当痛いんだな?」

 掌で涙を拭き取ってやると、

「思ってたほどじゃないって、言ってるじゃないですか」

 泣き笑い。

「違うの、なんかね、今、あたし、先生とひとつになってるんだなって思ったら、泣けてきちゃって」

「……そっか」

「先生」

 潤んだ目が、俺をまっすぐに見上げる。

「あたし、あきらめないで良かった……ずっと先生のこと好きでいて良かった」

「うん……」

―――愛してます、先生。

 その囁きに促されるように、顔中に唇を這わせながら、少しずつ腰を動かし始めた。俺にしがみつく

桜の腕に、一層力が籠もる。耳元で、小さな悲鳴のような喘ぎが漏れる。しかし、その喘ぎには、次第に

痛みを堪えているだけではない、甘い吐息が混じってきて。

 今夜は、俺が、桜の瑞々しい躰を目覚めさせるのだと思っていたが、果たしてそうではなかったようだ。

 桜が、俺の心の頑なな部分を、目覚めさせていく。

 愛しい、と思う。

 その気持ちを、言葉にして、伝えることができる。愛撫にして、伝えることができる。そうさせてくれる

桜が、更に愛しくて。

 つながった部分からだけではなく、触れ合う肌から、肩に食い込む指先から、耳元で聞こえる喘ぎから、

自分がみるみる染まっていくのを感じていた。

 染まっていく―――桜色に。                          Fin.












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あとがきのようなもの

今回も、素人小説、しかも歯が浮きまくり( ̄Д ̄;;のゲロ甘を、最後までお読み頂きまして、
誠にありがとうございますm(__)m
このガラにもないゲロ甘っぷりは、連載中の長編『まだきみ』があまりにも重暗い反動のようでございます。
ぶっちゃけ、書きながらえれー恥ずかしかったです……(汗
ストーリーも無い単なるらぶえっちですが「優しさ」というあたりを感じて頂ければ、恥ずかしさに
のたうちまわりながら書いた甲斐があるというものでございます。
それにしても、菅野センセは、色々大変だなあ(笑

さて、連載中のど暗シリアス『まだきみ』は、ラストの5章に入って参ります。
早めに予告させて頂きますが、晃の暗い話はこれで終わるわけではございません。
もちろん『樹下の天使』につながっていくわけですし、
更に、裏『樹下…』というか、晃版という感じの話も構想しております。
『樹下…』では書ききれなかった、もしくは書かなかった、晃の行動や思い、
美誉子が晃に書いた手紙など、どろどろくろぐろと盛り沢山の作品になる予定です。
時間軸的には、『樹下…』後半〜『半熟…』のあたりです。

と、まあ構想はできているのですが。
この重暗い路線を、更に続けて書けるんかいな&読者様がついてきて下さるんかいな_| ̄|○
と考えてしまうわけでございます(^_^;

とりあえず、『まだきみ』連載終了後は、青森を舞台にした、ちょいと大人なノンシリーズ短編を
書こうと思っております。微ファンタジー・しっとり系です。
長編は、それの後に突入して参りたいと思っております。

樹下シリーズでは、晃が大学に入った年の夏休み(夏休み好きだなぁ〜_| ̄|○)の、
晃×美誉子の痴話喧嘩つきらぶえっちも構想しております。

で、ご相談なんですが、『まだきみ』の続きと、夏休みの痴話喧嘩つきらぶえっちと、
どちらを先にお読みになりたいでしょうかね?(爆)
読者様方にひとこと頂ければ、執筆の方向性が定まるかもしれないなと…(主体性はどこいった;;)

そしてまた主体性のない30000hit企画に投票下さった皆様も、誠にありがとうございました。
結果に則りまして「言えない言葉」で短編を書きました……が、申し訳ございませんっm(__;)m
エロでもなければ、晃×美誉子でもありません(汗)
桜×菅野で、この『染まり初め』の続きの、せつない、でもラブみたいな話です→コチラ
エロは残りのお題で存分にやらせて頂きたいと存じますm(__)m

ではでは、あとがきと言いながら、関係のない話ばっかりお読み頂き、ありがとうございました。
更に、連載への励ましや、ご感想などへも、重ねてお礼申し上げますm(__)m
まったくもって、読者様の後押しあっての、どりなのでございます(T-T*)ウウウ

心からの感謝をこめて−−−

                                       2006/5/26 どり拝

                                      
シリーズ目次