手をつないで、夜道を 8



―――やだ、こんな恥ずかしい姿勢!

 膝を突き、頭を枕に埋め、尻だけが高く上がっていて、その尻だけが露出しているのだ。

 この格好はあまりにも……!

 しかし、あまりの恥ずかしさに尻を降ろそうとしたら、
「……ひっ」
 前から回った彼の手が、ぐい、と恥骨を押し上げるように掴んだ。快感混じりの衝撃に、びくりと
むしろ尻を跳ね上げてしまった。
 ―――そこに。
「……あ」
 ずぶりと。
「あ……ああー……」
 おそらく中指が、私の中に、深々と。
「ああ……あー」
 ずぶりずぶりと指が差し込まれるたびに、声が出てしまう。
 根元まで入ったのだろう、指の前進が止まって。
 長い指が奥をかき回し始める。
 
 ぐちゅ。
 ぐちゅ。

 いやらしい音が、部屋に響き渡る。
 その音よりも、もっといやらしい声が漏れそうになり、枕に顔をきつく押しつける。
 それでも羞恥で耳から火が出そう。
「……あぁん!」
 恥骨を抑えてつけていた手から指が伸び、敏感な突起に触れた。ほんの軽く触れただけだったのに、
悲鳴のような声が漏れ、頭が大げさに跳ねてしまった。
 中の指が2本に増やされた。
 1本と2本では明らかに違う―――圧迫感も、快感も。
 指2本の複雑な動きにかきまぜられ、こねくり回され、そこに時々突起への刺激が加えられ―――
私の中は、融けてしまったに違いない。原型をとどめないほどに。
 その証拠に、頭の中の赤い光がどんどん大きく眩しくなっていっている。

 どうして、こんなに急に、私を抱きたくなったの?
 どうして、いつになく乱暴なの?
 どうして、何も言ってくれないの?
 やっぱり怒ってるの? 

 幾つもの問いはみるみる赤い光に飲み込まれ、私は今、全身で彼を感じる以外のことはできなく
なっている。
 ぐずぐずに融けてしまったはずなのに、彼の指をぎりぎりと締め上げ、全身を震わせながらだらしない
声を上げる、こんな私、私じゃない。
 こんな私、彼に見られたくない……けれど、見て欲しい。焼け付くほどに、見つめて欲しい。
羞恥に溶けてしまうまで。
「あ……ああああぁあっ」
 背や脚が制御しきれないほど力み反り返り、光が瞼の裏で炸裂した。
 激しい指の動きが止まっても、光はなかなか去らない。体の震えも収まらない。
「……あ……あー……あ…・っ」
 指が引き抜かれる瞬間にも、また小さな光がスパークした。
 ベッドにはしたない姿勢のままで動けないでいる私の上を越えて、彼の腕が伸びる。朦朧としつつも、
彼が避妊具を取り、それを装着する気配はわかった――と。
 それが、無造作にそこにあてがわれて。
「……え?」
 こんな姿勢のまま?
 いきなり?
 思わず腰を引いたが、それを予測したかのようにすかさずウエストが両手で押さえつけられて。
「……ああああぁんっ!」
 一気に突き入れられた。
 十二分に濡れてほぐれているにも関わらず、指とは比べものにならない圧倒的な質感のそれに、
いきなり貫かれた衝撃ときたら。しかもすぐに激しいピストン運動が始まって、嫌らしい水音と肉の
ぶつかる音が遠慮会釈無しに響き始める。
「……む、無理っ、いきなりは無理だから……っ」
 ウエストをがっちりと抑えている手を振り払おうと回した私の手は、簡単に退けられ、しかも彼の手は
きゅっと乳首を捻り上げた。
「うあっ……それダメっ……」
 ひねり上げられたのは乳首なのに、接合部分が燃え上がる。
「無理でもダメでもねえだろ」
 息は荒いのに、彼の囁きはあくまで冷静。冷たいほどに。
「こんなに濡らして、ぎゅうぎゅうに締め上げてて、よく言うよ」
 つう、と指先が内腿を撫で上げる。
「腿まで垂れてるっつーの」
 ……え。
 言われて気づく。
 内腿を滴る冷たい感触に。
「……やだっ」
 かあっと後頭部が熱く火照り、体が強張る。
 なんて……私ったら。
 こんなに、滴るほどに。
 涙が滲む。
 こんなに恥ずかしいのに。
 乱暴に突き入れられて痛いのに。
 不機嫌な彼が怖いくらいなのに。
 なのに、それを上回る快感に圧倒されている。
 それを認めないわけにはいかない。
「……ひっ」
 枕を噛みしめた唇から悲鳴が漏れる。
 内腿を撫でていた指が、敏感な突起に当てられたのだ。
「あ……やめ……そこダメ……あぁ……」
 強く突かれながら乳首を捻り上げられ、更に一番敏感な部分を指先で押しつぶされ。
「うぁ……あ……ん……やだ……」
 痛みなのか快感なのか、揺すり上げられるたびに思考はほどけて、抗う力が心身から奪われて。
「イヤ……あ、いい……い……イク……」
 ぐん、と一層強く、速く、彼が私の中を出入りし……

 光と共に、奈落に突き落とされた。
 落下感と浮遊感。
 ただ彼とつながっている部分だけが、なまなましく存在している−――

 浮遊感と体の震えが収まるにつれ、全身の力が抜けて腰が砕け、ベッドに落ちた。その拍子に
彼がずるりと抜けて……それで彼もイッたのだと悟る。
 そのまま彼が背中に被さってきた。
 ずしりと体重がかかり、首筋にかかる息が獣じみて荒い。
 しかし、
「――ヒミコ」
 私の名を呼んだ囁き声は、もう突き放したように冷たいものではなくなっていて。
 むしろ、不安げな……

 その弱々しさに、思い至る。
 もしかして、彼のこの行為の理由は、怒りではなくて……

「お前、津久葉大に行きたいのは……あの人が……岡島さんがいるからじゃ、ねえよな?」




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